視覚障害者のタブレット利用に関する考察

筆者の知人は網膜色素変性症で、光が判別出来る程度のほとんど全盲です。本や印刷物を機械の音声で読み上げてくれる「よむべえ」という製品を10年くらい利用していましたが、故障したため代用品に近いものは無いかと少し前に調べました。※現在は「よむべえスマイル」として提供されています。

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用途

知人の環境においては主に本や雑誌、印刷物を読む機械が必要なのですが、クラシックが好きなためタブレットが適しているのでは、と考えました。

既述の「よむべえ」はどうも消耗品であるらしく、しかも修理には結構な額が掛かるので買い替えた方が安い、という製品です。自治体によると思いますが、新規で購入しても補助があって少なくとも1万円程度はするし、定価だと20万円弱する高額なものです。パソコンやタブレット、スマートフォン3台を所有している筆者としては、文字を音声化するのがメインの製品にこの時代においてこの値段は高くないか?と思うわけです。

厳密に言うと、どうせお金を出すなら多機能な方がより人生が面白くなると思ったのです。知人は高齢者ですが、筆者に調べ物を依頼することも多く、可能ならインターネットなどを出来た方が便利で世界が広がるのは間違いないでしょう。

現実的な考察

まず何故タブレットかと言うと、高齢者や弱視の方に向けた商品だとスマートフォンは専用のものが発売されていたりします。ただスマートフォンは画面が小さいため、若者はたぶん大丈夫でしょうが高齢者には押し間違いなど不便だと思いました。

よってタブレットが選択肢に上がったのですが、現在だと大別してOSがGoogleのAndroidとAppleのiOS(iPad)があります。前者の方が価格帯が安いのですが、調べた範囲だとアプリを幾つかインストールしないと視覚障害者の利用が難しいようで、正直面倒です(笑)。Googleのタブレットでも視覚障害者向けの機能はありますが、デフォルトで十分では無いという印象です。

そこで後者の選択肢ですが、なんとApple社では視覚障害者に限らず、障害者向けの機能が充実していることを大きく宣伝しています。また、外国の方で実際にiPadを購入して、一人で使いこなして人生が変わった!と言った記事も見られました。現状だとAppleの方が視覚障害者を意識した設計をしていて、非常に好感が持てます。アプリを入れなくても標準で利用出来るのは素晴らしいことです。

求めること

知人の環境で恐縮ですが、必要な機能、あったほうが良いと思うものは以下の通りです。

  1. 本や印刷物などの文字が読めること。
  2. 1に関連して電子書籍の購読。
  3. インターネットの閲覧とその読み上げ。
  4. 撮影した物体の認識。
  5. ラジオやネット番組の聴取。

といったところです。実はいずれも問題はクリア出来そうで、それぞれ解説していきます。

1は「iよむべえ」という「よむべえ」のアプリ版が提供されており、カメラで撮影したものを音声で読み上げてくれるという代物で、標準機能の「Voice Over」を使って本などを読むことが可能です。しかも4千円弱という、何故ここまで「よむべえ」と価格差があるのか!?と思えるほどです。ただし、このアプリだと撮影する必要があるので、カメラの遠近感など慣れは必要だと思いますし「よむべえ」と比較すると最初は難しいでしょう。

2に関して、今ではAppleのiTunesに限らず各社から電子書籍は販売されています。しかも大抵が紙よりも安く、定期購読できるものも多いです。知人はニュートンという科学雑誌を既に定期購読していて、それを電子版に変えるだけで1万円以上は安く済みます。ただし電子版だと内容が若干異なるようですが、基本的な部分が合っていれば問題無いと思います。

また、大抵の本は電子化されていて(紙媒体よりは遅い)、そちらの方が安いことがほとんどでしょう。知人は本もよく読むため総合的に電子版の方が安く済むので、その分をタブレット代に充当すれば将来的に元は取れると考えられます。

3は標準の機能で十分に可能です。Siriが搭載されている機種では喋るとインターネット検索もしてくれます。このSiriが特徴的で、視覚障害者には様々な局面でサポートしてくれるでしょう。

4はカメラで撮影したものを「それが何か?」について答えてくれるアプリがあります。「TapTapsee」などですが、紙幣や物体の情報を教えてくれます。完璧ではありませんが、あると便利なアプリだと思います。ただ月額で千円くらいはします。

5は世界中のラジオも聴けますし、インターネット専門のラジオでも聴くことが出来ます。知人は「OTTAVA」という番組が好きでしたが、結構前に通常のラジオ放送からは撤退しインターネット専用となってしまい聴くことが出来なくなっていました。それもタブレットを持ちインターネット接続が出来れば聴くことが可能になります。

問題点1-どこで買うのが良いか-

前項では視覚障害者ゆえに困難なことでも、健常者に近い環境にすることが出来る可能性について触れました。ですが大きな問題点として金銭面です。一般的にiPadの購入を考えると、auやドコモ、ソフトバンクのキャリアで契約することになりますが、これが高い!少なくとも月に5千円くらいはします。2年縛りだと2年で10万以上になり「よむべえ」を買った方が安くなってしまいます。なのでこれはオススメ出来ません。余談ですが、携帯各社はボロ儲けという話なので、通信料金等が顧客のために設定されているとは到底考えられず、筆者は可能な限り安価にiPadを所有する手段を調べました。

実はAppleで直接買うと3万円台からあります。恐らくこれが一番安く済みます。「Wi-Fiモデル」になりますが、自宅に固定回線がある場合はそれを使用すれば問題ありません。無い場合は「Wi-Fi + Cellularモデル」が候補に挙がりますが、残念ながらこちらは1万円以上高くなってしまいます。ですが格安SIMを使えば月々の料金は安く出来ます。ソフマップとかでも買えます。

ただ筆者の所感ですが、格安SIMだと月々千円程度で済むのですが、動画はまず観れないですしネットラジオの聴取でも支障が出る可能性があります。視覚障害者に動画は必要ないでしょ!って素朴な疑問もありますが、YouTubeなど音声だけを聴きたくても映像が付随しているものは多くありますし、通信速度が遅いものや制限があるものは不便に感じるでしょう。なので無制限のSIMが適していると思います。

もちろん固定回線が既にあるか、引けるならそれが一番でしょう。また家族でスマートフォンを使っている人がいるなら、キャリアでもタブレット割引が適用されて安く済みますが、通信速度の制限があるのであまりオススメは出来ません。視覚障害者だとネットラジオを流しっぱなしというケースも考えられるので、制限が掛かったら全く使い物にならなくなりますし、現実的な選択肢ではありません。

筆者も当初はキャリアでの契約を検討していました。しかし制限が掛かるものをオススメすることは出来ないことと、2年経過後を考えるとキャリアで購入しない方が良いと考えました。2年経過後は端末代の支払いは無くなりますが、それでも無駄に高い通信料は払い続けなければならず、契約更新のタイミングなど面倒な部分が多いのは事実です。

実際に筆者が使用しているiPhoneは5年近く現役で特段の問題はありません。丁寧に使えば恐らく10年は使えるでしょう。つまり長い期間で考えると、トータルで安くなるのは端末の購入と通信契約は別個にした方だと思います。

また、iPadの本体容量にも触れておきます。一番下の16GBだと少なく感じますが、iCloudを使えば実質的に増量出来ます。iPadなどはSDカードが使えないので、この方法がベストでしょう。なお、筆者のiPhoneは32GBで楽曲を500曲以上入れていますが、まだ3GB以上余っていますのでそこまで大きな懸念では無いと思います。

問題点2-利用開始まで-

特に高齢者ですが、初期設定は健常者にやってもらった方が良いでしょう。既述の外国での利用者は自分で全て完了させたようですが、SIMの挿入やWi-Fiの設定など目が見えないとかなり面倒だと思います。目が見えて割と若い世代の筆者でも初期設定は面倒です(笑)。

よって、全てを障害者単独で行うのは厳しいと思われます。健常者が購入から設定までをやってあげて、後は使うだけ!という状態で渡すのが確実です。またある程度の操作説明はした方が良いので、サポートは必要です。

問題点3-使用上の注意-

主にiPadを推してきましたが、使用する上での注意点があります。まずAndroid製品は防水仕様が一般的なのですが、iPadは防水仕様では無いので水には注意が必要です。

次にiPadでは基本的にセキュリティソフトが提供されていません。Appleで配信されているアプリは審査が厳重なので必要無いという理由が主ですが、インターネット閲覧に関しては何とも言えないところです。Macでは提供されていることがあるので筆者としてはiPad用にあっても良いとは思いますが、現状だと普通の使い方ならウィルス感染はそこまで脅威では無いという解釈なのでしょう。ただしフィッシング詐欺の事例も散見されるので「いつ脅威があるか分からない」くらいの心構えで接した方が良いと考えられます。

ちなみに筆者はイーセットスマートセキュリティ(ESET Smart Security)をパソコンやタブレット、スマートフォンのそれぞれに搭載していますが、iPhoneには対応していないのでiPhoneでは特に慎重に利用しています。

余談

余談ですが、今だと携帯各社から通話定額プランが提供されているので、iPhoneで契約して固定の通話回線を兼ねる、という選択肢もあります。まぁ高齢者の利用には現実的では無いと考えたので、筆者は除外しましたが。

また、以前だとWiMAXのルーターという選択肢もあったのですが、制限が掛かり始めたのでオススメはしません。

最後に

こういった情報は少ないので調査に苦労しましたが、所感としては高齢者で視覚障害者でもiPadは利用する価値はあると思います。音楽もiTunesでCDより安く購入出来ることも多いですし、生活の利便性が増すことは間違いないでしょう。そういえば弱視の人がタブレットを持ちながら街を歩いているニュースも見たことがありますし、YouTubeではiPhoneを視覚障害者の方が華麗に操作している動画もありましたので、Apple社の製品は有力な候補となるでしょう。

ただ、ここまで視覚障害者のタブレット利用に関して考察してきましたが、残念ながら筆者の知人は購入していません(笑)。高齢者だと新しいことを嫌うせいか「よむべえ」をまた買ってしまいました・・・。

したがって実際の検証はしていません!視覚障害者のタブレット利用を想定した調査結果として捉えて頂ければ幸いです。

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